「っ、離せって…!こんなことやってる場合じゃないだろ…っ!」
「ちょっと絃織…!私の弟は自分の弟みたいなものだって言ってたじゃん…!」
「忘れたな」
「忘れるかっっ」
夫婦漫才は今じゃない。
やるならあとでやって欲しいし、とうとう廊下から覗いていた幼い兄弟たちは泣き出した。
しかし子供の泣き声には慣れているのか、気にせず力を加えてくる。
「おまえ、あの街で裏に手ぇ染めてねえだろうな」
「……裏って、」
「なにかの犯罪に加担してねえかってことだよ」
「……加担してたら…どうするんですか」
「俺たちの敵だ。ここで消す」
「いや消さないで!?そんなことしたら私泣くよ…!?」と、ひとりだけ騒いでいる絃姉。
この男の威圧感に怯えないのはたぶん、絃姉だけだ。