「お前の母さんは…、お前を捨てたんじゃない」
こんな、期待を。
夢のような期待を。
そう言ってくれる日がいつか必ず来てくれると信じていた、期待を。
「捨てたんじゃなく、…父さんと真澄を守ってくれたんだ」
苦しそうだったもんな、いつも。
あの女は最低だ、大嫌いだ、
妻でもなんでもない───、
そう言うたびに唇を噛んで、こぶしを握って、苦しそうだった。
この人は嘘がつけないんだろうなって、俺は昔から思ってたよ。
「今もずっとずっと……守りつづけてくれているんだ」
「…今も…?」
「ああ。関係を一切と断ち切ることで、彼女は俺たち親子を守って……誰よりも愛してくれているんだよ」
意味がわからない。
守るために関係を断ち切るってなんだよ。
愛してくれているのに断ち切るって、普通に考えておかしいだろ。
そんなの都合のいい言い訳じゃないのか、都合のいい綺麗事じゃないのか。