軽く髪をといてから、怜のいるキッチンへ向かう。
料理の良い匂いがしてきた。
オムライスを作ってくれたみたいで、ちょうど出来たところみたい。
怜がオムライスに向かってケチャップで何かを書いていた。
覗いてみるとケチャップで「ようこそ」と綺麗に書かれた文字。
「着替え済んだようだな。服、よく似合ってる」
「あ、ありがとう。でも私なんかがこんな立派な服着ても、あまり似合わない気がするんだけど…」
「すげえかわいいから、大丈夫だ。冷めない内に食おうぜ」
そう言って笑う怜の笑顔が優しくて、かわいいの部分を否定出来なかった。
「それにしてもオムライスにようこそって…普通名前とか書かない?」
「それでも良かったんだが、沙羅が家に来てくれたことが嬉しくてようこそになってしまった」
歓談しながら一緒にオムライスを食べた。
誰かと楽しく食べるご飯って、とても楽しい。
食事をしながら色んな話をした。
私のこと、怜のこと。
普段から心の許せる友人がいなかった私には、あっという間に過ぎてしまったひと時だった。
「「ごちそうさま」」
二人で手を合わせて言い、笑いあう。
何でもないことが、楽しく感じる。
この感情は何だろう?
「洗い物は私がするね」
食器を下げる怜を見て、私も食器を下げる。
「いいのか」
「だって怜は作ってくれたでしょ、すっごくおいしかったよ」
「そういうことなら任せようか」
怜はソファに座り、誰かと電話を始めた様子。
やっぱり、怜は忙しい中私へ時間を作ってくれてるんだよね。
そのことが申し訳なかった。
怜の電話の内容は、自分の洗い物をする音でよく聞こえなかったけど、私のことを話しているのがわかる。
通話を終えた怜が「ちょっと出かけてくるから好きに過ごしてて」と言って、部屋から出ていく。
「いってらっしゃい」
慌てて玄関まで見送りに行く。
駆け付けた私を見た怜がそっと頭を撫でてきて、額に口づけてきた。
顔が真っ赤になってしまう。
「大事な用事を片付けてくるから、いいこで待ってるんだぞ」
「気を付けてね」
お互い手を振りあって、怜が乗り込んだエレベーターの扉が閉まる。
私はしっかり鍵をかけた。