怜に案内されて、キッチンやリビング、怜の部屋など色々見せてもらった。

全体的に黒を基調とした部屋だった。

ところどころに赤やオレンジの家具が使われていて、センスの良い部屋という印象を受けた。


「ここの空いてる部屋は沙羅が使え」

「私の部屋があるの?」

「元々部屋はいくつか余っていて、まだ物置となってる部屋もあるが…使いたかったら片づけるから言ってくれ」

「いやいやここだけで十分だよ」

最上階に一人で住めば部屋は余りそうだけど、だからって何個も必要ないよ。


それよりも、自分の部屋があることが嬉しかった。

実家でも自分の部屋はあったけど、玄関からリビングへ続く廊下の途中にあり、部屋のドアを閉めることを禁止されていたから、通路を通るたび丸見えだった。

おまけに柚子や母は何かにつけて部屋に入ってきては用事を言いつけた。

帰宅時に持ってたゴミなんかも部屋に投げ入れてくる。

非常に窮屈で住みにくい部屋だった。


ドアを開けると、他の部屋とは違い白い壁紙に木製テーブル、葉っぱ柄のカーテン。

ナチュラルで落ち着いた雰囲気の部屋だった。

「この部屋だけ雰囲気違うね?」

「沙羅を家に誘ってから、大至急模様替えさせた」

「え!?業者の人の迷惑になったんじゃないの」

「代わりに報酬を弾んでおいたから問題なしだ」

真顔で言い切る怜に思わず笑ってしまった。