俺の声に反応してゆっくりと振り返る高宮。
「ああ、枝野」
彼女はあの愛想笑いを浮かべた。
俺にも。
初めて話してから、2人で話すときは笑っていなかったのに。
「なんかあった？」
微かに視線が下に泳ぐ。
「なんか、あった？」
もう一度聞く。
前より少しゆっくり。
「私さ」
高宮は俺を見ないまま話し始めた。
「友達がね、私のこと何考えてるかわかんないって、いつも愛想笑いしてるって。ばれちゃった。私上手く隠してたつもりだったのに。接し方わかんなくなっちゃって見事ぼっち」
「うん」
「こういう時ってきっと悲しむもんだと思うんだけど、私、何にもない。そうなんだってなって、どうすればわかんなくなっただけ。私、やっぱり人としてダメなんだよ」
