なんと、噂によると佐山くんはいつも学年一位か二位を争う猛者だった。


「ここは、この裏技を使うと解けるんだよ。公式はやって覚えるもんなんだ」


「な、なるほど……佐山くんの教え方は先生よりもわかりやすいね……」


「ありがとう」


噂を疑う必要もないくらい、佐山くんの教え方は上手い。そして、すんなり頭に入ってくる。


優しくて、かっこよくて、頭も良くて。佐山くんは私といて、いいのかな?



「あの、里奈」


今朝にも聞いたばかりの声。私はこの声に敏感で、とても弱い。


「ゆ、悠里……どうしたの、?」


「図書室に先生に呼ばれてたよ。早く来いだって」


鋭い目と言葉。なんで悠里が不機嫌なの。私がむしろ怒りたい気分なのに。


「わ、分かった……佐山くん、ごめんね」