自分で呼びつけておいてだんまりもないだろう。

 そう思いながら切り出し方を探るのだがうまくいかない。

 俺がうつむいたままでいると、


「で、話って何かな」


 緩く煙を吐き出しながら、飯島さんが先に口を開いた。


「突然かけてきて、急に呼び出すってことは何かあったか……いや、美咲に何もなかったとすれば何か聞きたいことがあるんだろう?」


 飯島さんはガラス製の灰皿に灰を軽く落としながら俺を見た。

 苦笑に近い表情だ。


「突然……すみません」

「いや、別に構わないよ。今日は比較的仕事も空いてたしね」


 カウンターにグラスが置かれた。

 飯島さんはまだ吸いかけのタバコを消してからそれを手に取った。


「で、何かな」


 聞きたいのは、小川さんの過去だった。

 けれどやはり、こうして飯島さんを前にすると、

 もう一度確かめずにはいられなかった。


「あなたは……飯島さんは、小川さんの何なんですか」

「え? 何て?」

「小川さんとはどういう関係なんですか」

「……どうって、前にも言ったじゃないか。友人だよ」

「……友人」


 あの日の光景がよみがえる。

 飯島さんの裸足。慌てて着たようなTシャツ。

 床に落ちたスカート。小川さんの白い肩。


 俺が見たものは、どう考えたって、友人関係のそれとは違うはずだ。