「はぁ、はぁ……」

「こら、勝手に実験室に入って。いけない子」

「ちが、万年筆が落ちてて……って。
そうじゃ、なくてっ」


走って、息切れする私。

涼しい顔を桜に向けたまま、目だけを動かし私を見る先生。


「どうして、まだ、ここにいるの……?」

「翠々香を待ってた」

「私、を……?」


先生、何を言ってるの?

だって先生は、今日のために毎日がんばってたのに。

こんな所にいちゃダメじゃん、行かなきゃ!


「ば、バス!出ちゃいますよ?約束の時間、遅刻したらダメなんでしょ?」


焦る私を見て「確かにね」と、先生は笑った。

全然あせってない、ばかりか……。

むしろ、スッキリした顔に見える。


「先生、何かあった?私に、何か隠してる?」


ドキドキする心臓を、服の上からぎゅっと握る。

すると余計に心臓の荒ぶりは激しくなり、心音が直接頭に鳴り響くみたい。

そんな私に、先生は――