「や、だ……なに、これ? もうやだぁ……っ」


部屋の隅まで逃げて、膝を抱えて泣きじゃくる。

そんな子供みたいな私を、先生は遠くから見つめた。


「翠々香、今の君の身に起こっているのは――発情期だ」

「は、つじょう、き……?」


って、動物がなるアレ?

どうして、私が……。まだ夜じゃないのに!


「普通、動物は発情期を迎えるとオスをおびき寄せるためにフェロモンを出す。その匂いにあてられたオスは……さっきの男子みたいに、本能で……いや、今はいい。今は、翠々香の体をなんとかしないと」

「……っ」


ポタポタと、流れる涙は冷たいのに。
体をめぐる血は、こんなにも熱い。

まるで正反対。

人間なのにウサギな私。
そんなウサギが恋するのは、自分を研究する研究者。