「お前ら、翠々香になにしてんだ!!」


初めて見る、怒った架千先生。

眉は吊り上がって、いつも眠そうな目は開いていて。

一瞬で男子たちを投げ飛ばした後、私を抱き上げる。


「お、俺らは、別に、」
「そうだよ、ちょっとからかっただけだっての!」


それだけ言って、男子は保健室から去って行った。

遠くの方で「今の声は⁉」と、学校の先生たちが騒いでいる。


「ここから逃げるけど、いい?」

「……っ、はい」


お姫様抱っこされたまま、コクンと頷く。

すると先生は、似合わない俊敏な動きで窓から脱出した。そして学校を出て、速足で家へと帰った。

バタンッ


「翠々香、ごめん……」

「……え?」


私を抱いて走った先生の方がしんどいはずなのに。

今は、先生よりも私の方が荒い息をしていた。そのザマは、さっきの男子たちみたいで。

また、自分が「キツイ」表情を浮かべているのかと思うと、心の底から嫌悪感を覚える。