こちらは第二王女をお願いしたいと思っている、と父王がしたためてしばらく、第二王女殿下を第二王子の妃として迎えたいと返答があった。


真偽は定かではないものの、あちらも第二王子が、自分から第一王子の代わりを申し出たとのこと。せめてもの慰めに書いてくれているだけのような気がするけれど。


第二王子殿下は、齢十九、わたくしの二つ上である。年齢差はおかしくない。わたくしってば、二という数字に縁があることね。


そうして、オルトロス王国(夜の国)第二王子と、アマリリオ王国(昼の国)第二王女の婚姻が成される手筈となった。


つまり。

お見合いもしていないし、挨拶もできていないし、絵姿さえ分からないし、お互いに相手のことは全くもって分かっていないけれど、二番手たるわたくしたちは、結婚する運びとなったのである。


「──ミエーレ!」


凛とした女性の声。お母さまの声だ。籠に乗り込もうとした足を下ろしてもらう。


「お久しゅうございます、お母さま。家族の集まりにもなかなか顔を出せない娘で申し訳ありません」

「ええ、あなたに会うのは久しぶりね。ですから、突然の申し出に驚きました」


ミエーレ、とため息のような吐息交じりの呼び掛けに、にっこり笑みを作る。笑ったかどうかは相手に見えないのだけれど、声色には、口の形が乗る。

わたくしは、悲しい門出を迎えるわけではないのだもの。


「ミエーレ、あなたの申し出はありがたいこと、気高い考え方です。けれど、わたくしの胸は張り裂けるようです」

「っ」


ほら、危ない。泣きそうになるのを、唇を噛んで抑える。