「つまり学校一の問題児、澤田(さわだ)慧悟(けいご)を僕たち生徒会のメンバーに入れろってことですか?」


 暗雲立ち込める、梅雨真っ只中の生徒会室。
 
 私たち7人の生徒会メンバーの間にジメッとした重苦しい空気が漂う中、長机の中央の席に腰掛けていた美少年が冷ややかな視線を校長にぶつけた。


 彼の名は葉月(はづき)理央(りお)

 私、松戸(まつど)菜々(なな)が所属する【私立、松之木学園(まつのきがくえん)、生徒会執行部】の会長様である。


 顔良し、頭良し、運動神経良し。器用で要領も良く何をやらせても完璧な理央は、生徒からも教師からも一目置かれ、カリスマのように慕われている。

 性格が腹黒いことを覗けばパーフェクト。人類最強だと言っても過言ではない。もっとも皆の前では猫を被っているから実質、最強みたいものだけど。


「簡単に言えばそういうことになるわね」


 そんな無敵の神から強烈な眼差しを食らった校長は焦り口調で捲し立て、握り締めていた花柄のハンカチで真ん丸な顔を拭った。
 
 熱いと言うよりは冷や汗である。



 「入れてどうするんです?」

 「そうねぇ……。活動を通じて楽しい学校生活を送れるようにしてあげて欲しい」

 「はぁ…」

 「そして荒れ果てた彼を真っ当な人間に更生してあげて欲しいの」


 老後の理想でも語るように、校長はうっとりとした表情で“欲しい、欲しい”と私達に要望を告げる。

 現実逃避をするような目で明後日の方向を見つめちゃって、抵抗感を露わにしている私達のことなんて知らんぷり。

 頼めば頷くと信じて疑わない様子だ。