週末は必要最低限の会話しかなかった。
夏鈴は月曜日の朝なので気合いを入れ直す。

(今日も頑張らないと。陸斗に心配させないためにも、早く仕事終わらさなきゃ。)

締め明けだが、仕事が落ち着くことはなかった。今度の新人漫画家特集のため、新たな作家さんと打ち合わせになる。夏鈴が初めて1人で任せてもらう仕事だ。気合いを入れて打ち合わせ準備をする。

今日打ち合わせするのは、新人漫画家特集と言っても、30台半ばの大橋拓也だ。10年ほど作家活動を続けているが、なかなか芽がでていない。今回の特集には気合いを入れて来ていた。

「はじめまして。編集部の山下夏鈴です。よろしくお願いします。」
夏鈴は挨拶をし、今後の方針等を話そうとする。

「君さ、何年目?」

「1年目ですが、一生懸命頑張らせていただきます。」

「俺さ、新人と組むとか嫌なんだよね。俺は編集部の練習台じゃないの。この作品でブレイクしたいんだ。もっと上の者をよんできてくれ。」

「今日は私が担当させていただくことになっておりまして、お話だけでもひとまず聞いていただけませんか?」

夏鈴はそう言い、丁寧に話をするが、大橋は全く聞く耳を持たない。結局何も決まらぬまま打ち合わせは終わってしまった。

山田課長にその旨を報告したが、みんなたくさん仕事があると言われた。このまま夏鈴が担当を続けることとなった。