杏菜は、ガイドヘルパーの堀込と
一緒に外へ一歩出た。
湊人と一緒に出かけたことは何度かあったが、他の人と出かけるのは、
目が見えなくなって、これが初めてだ。
初めて会っても、結局は指示に従って、先に従わないと前に進めない。
声と白杖の感覚を頼りに進む。
歩いている途中で凸凹の感覚が靴底から伝わる。健常者の人でも気になって、歩いたことはあるあの黄色い凸凹の道路だ。点字ブロックを正式には視覚障害者誘導用ブロックという。まさかこれが役に立つとは目が見えていた時は、全然思いつかなかった。白杖をトントントンと動かして、凸凹を探す。
「杏菜さん、外出するのは良いんですけど、
目的地決めてないですよ。」
「あ、そうだった。
外に出るのがあまりにも
久しぶりすぎて嬉しいんだ。
しかも、この白杖使うのも
何か楽しいし。」
「楽しんでいるようでよかった。」
堀込は、なるべく通行人に
ぶつからないよう、
自分の腕をしっかりと掴ませた。
「目的地は、決めてあるので、
着いてきてもらえますか?」
「うん、わかった。」
(僕は友達か。もう敬語は終わり。
慣れてきたってことかな。)
堀込は初対面ですぐに打ち解けられる
杏菜に嫉妬した。
仕事上でなければ、人見知りが強い
堀込にとって、人との距離を縮めるのは
難しかった。
2人が向かった先は、
堀込の職場でもある。
視覚障害者情報提供施設の
【ブルーベリー】だった。
外壁にはブルーベリーのイラストが
描かれている。
スロープの上をゆっくりと進む。
カンと白杖があたった。
「だんだん杖の扱い方が上手くなって
きましたね。
そのまままっすぐ中に入ってください。
自動ドア開きますから。」
堀込は玄関の自動ドアを先に
センサーに手をかざして開けた。
「ここはどこ?」
「心配しないで、今の杏菜さんにとって
役に立つものがあります。」
堀込が案内する施設は、視覚障害者の
たくさんのサポートが
受けられるものだった。
点字の本はもちろん、音声図書
常勤でカウンセラーが待機している。
週に3回ほど、盲目の人を集めた
コミュテニィも行われている。
同じ境遇の人が集まって、
話せる場所だ。
レクリエーションもあるようだ。
視覚障害者の雇用相談も承っている。
杏菜は、匂いや雰囲気を体で感じ取った。
いろんな人が話すのが聞こえる。
ずっと引きこもっていた杏菜にとって、
新鮮で、ワクワクしてきた。
老若男女様々な人がいて、
自分1人だけじゃないことに
安心する。
「世界変わるなぁ。」
瞼を閉じて、あたりを感覚で感じる。
この空気感悪くない。
「その子だれ?」
近くの女性ヘルパーとともにソファに
座っていた女の子が話しかけてきた。
「結子ちゃん。
その子は今日、初めて来たんだよ。
いろいろ教えてあげてね。」
先天盲の女子中学生だった。
割と歳が近いことに嬉しかった。
杏菜はもうすぐで18歳になる。
「はじめまして、笹山杏菜です。」
手探りで結子の手を握ろうとする。
堀込は、杏菜の手をつかみ、
誘導してあげた。
「ここだよ。」
「杏菜ちゃんっていうの?
私、結子。結ぶ子って書いてゆうこだよ。
よろしくね。」
「結子ちゃん、歳が近い子に会えてよかったね。いつもおじいちゃんとおばあちゃんに会ってたからね。嬉しいね。」
「ううん。おじいちゃんもおばあちゃんも
優しいから良いんだよ。
でも、年が近い方が話しやすいかも。」
声の調子が高くなるのがわかる。
杏菜も嬉しかった。
年下の友達ができた。
まともに話せる女友達ができたのは
久しぶりだった。
それからというもの、杏菜は、
この【ブルーベリー】に通うのが
楽しみになっていた。
堀込は、自分が相手するより
話し相手がいてよかったと安堵した。
一緒に外へ一歩出た。
湊人と一緒に出かけたことは何度かあったが、他の人と出かけるのは、
目が見えなくなって、これが初めてだ。
初めて会っても、結局は指示に従って、先に従わないと前に進めない。
声と白杖の感覚を頼りに進む。
歩いている途中で凸凹の感覚が靴底から伝わる。健常者の人でも気になって、歩いたことはあるあの黄色い凸凹の道路だ。点字ブロックを正式には視覚障害者誘導用ブロックという。まさかこれが役に立つとは目が見えていた時は、全然思いつかなかった。白杖をトントントンと動かして、凸凹を探す。
「杏菜さん、外出するのは良いんですけど、
目的地決めてないですよ。」
「あ、そうだった。
外に出るのがあまりにも
久しぶりすぎて嬉しいんだ。
しかも、この白杖使うのも
何か楽しいし。」
「楽しんでいるようでよかった。」
堀込は、なるべく通行人に
ぶつからないよう、
自分の腕をしっかりと掴ませた。
「目的地は、決めてあるので、
着いてきてもらえますか?」
「うん、わかった。」
(僕は友達か。もう敬語は終わり。
慣れてきたってことかな。)
堀込は初対面ですぐに打ち解けられる
杏菜に嫉妬した。
仕事上でなければ、人見知りが強い
堀込にとって、人との距離を縮めるのは
難しかった。
2人が向かった先は、
堀込の職場でもある。
視覚障害者情報提供施設の
【ブルーベリー】だった。
外壁にはブルーベリーのイラストが
描かれている。
スロープの上をゆっくりと進む。
カンと白杖があたった。
「だんだん杖の扱い方が上手くなって
きましたね。
そのまままっすぐ中に入ってください。
自動ドア開きますから。」
堀込は玄関の自動ドアを先に
センサーに手をかざして開けた。
「ここはどこ?」
「心配しないで、今の杏菜さんにとって
役に立つものがあります。」
堀込が案内する施設は、視覚障害者の
たくさんのサポートが
受けられるものだった。
点字の本はもちろん、音声図書
常勤でカウンセラーが待機している。
週に3回ほど、盲目の人を集めた
コミュテニィも行われている。
同じ境遇の人が集まって、
話せる場所だ。
レクリエーションもあるようだ。
視覚障害者の雇用相談も承っている。
杏菜は、匂いや雰囲気を体で感じ取った。
いろんな人が話すのが聞こえる。
ずっと引きこもっていた杏菜にとって、
新鮮で、ワクワクしてきた。
老若男女様々な人がいて、
自分1人だけじゃないことに
安心する。
「世界変わるなぁ。」
瞼を閉じて、あたりを感覚で感じる。
この空気感悪くない。
「その子だれ?」
近くの女性ヘルパーとともにソファに
座っていた女の子が話しかけてきた。
「結子ちゃん。
その子は今日、初めて来たんだよ。
いろいろ教えてあげてね。」
先天盲の女子中学生だった。
割と歳が近いことに嬉しかった。
杏菜はもうすぐで18歳になる。
「はじめまして、笹山杏菜です。」
手探りで結子の手を握ろうとする。
堀込は、杏菜の手をつかみ、
誘導してあげた。
「ここだよ。」
「杏菜ちゃんっていうの?
私、結子。結ぶ子って書いてゆうこだよ。
よろしくね。」
「結子ちゃん、歳が近い子に会えてよかったね。いつもおじいちゃんとおばあちゃんに会ってたからね。嬉しいね。」
「ううん。おじいちゃんもおばあちゃんも
優しいから良いんだよ。
でも、年が近い方が話しやすいかも。」
声の調子が高くなるのがわかる。
杏菜も嬉しかった。
年下の友達ができた。
まともに話せる女友達ができたのは
久しぶりだった。
それからというもの、杏菜は、
この【ブルーベリー】に通うのが
楽しみになっていた。
堀込は、自分が相手するより
話し相手がいてよかったと安堵した。