さすがは、ホストクラブNo.1のヒカルは
女子の扱い方には、慣れていた。
惚れるであろうポイントを掴んでいる。
ヒカルの魅惑に吸い寄せられるように
ぺったりと体を密着させて、
言われるままに着いていく。
杏菜は、自分でどうすることもできない
衝動に駆られていた。
一方、その頃の湊人は、
スーツのポケットに手をつっこんでは
イキっていて、道端に落ちている小石を
蹴飛ばした。
(ちくしょー。せっかく助けに来たのに
なんだってあんな態度取られなくちゃ
いけねぇんだよ。)
いつも、杏菜の前では冷静な態度だった
湊人でさえも、ヒカルを目の前にすると
嫉妬心がむき出しになるようで、
イライラが加速する。
杏菜が自然に
吸い寄せられていくのを見て、
大人げなく、悔しくなった。
杏菜は彼女ではない。
同居人でもない。
もちろん、妻でもない。
保護者のような感覚で金銭的な
お世話している女子の1人。
でもそれは、自分の性欲を
満たすものでもない。
何か欲求を満たすために
杏菜と関わっているわけじゃない。
ただ、単に、涙を流す杏菜を
見つけて、出会った瞬間から
何かを受け取り、救い、
見守ってきた。
でも、ヒカルに着いていく杏菜を見て、
自責の念に駆られた。
自分のやっていることは杏菜にとっては
迷惑なことかもしれないと。
ため息をついて、
ビルの隙間から見える星空を見上げた。
あんなに星が輝いているのに
己の星は、すさんでいる。
湊人にとっての杏菜は
何だというのか。
自分の行動に疑問さえ感じるようになる。
湊人は、来た道を振り返って、
すぐに繁華街にある
元いたシャンデリアラウンジの店に
戻った。
◻︎◻︎◻︎
「あ、アキラさん、アキラさん!」
ユウジがドアを開けてすぐに
駆け寄ってきた。
「おう、ごめんな。
ミカ来てた?」
「そうそう、今日、たまたまミカさん
予約時間より遅れてきたから、
大丈夫です。
今からなら怒らないかもしれない。
早くテーブルの方へ行ってください。」
「お、おう。」
ユウジに背中を押されながら、
ミカの待つテーブル席に笑顔で
対応した。
「ご来店ありがとうございます。
ごめんな、ミカ。
待たせたな。」
「ちょっとぉ、アキラ、遅い。
待ちくたびれたよぉ。」
ミカはアキラへの対応スイッチが
入ったようでヘルプのリョウには
目もくれず、クネクネと体を動かした。
「待ったってどれくらい?」
「えっとぉ、10分。」
「そんなに待ってなくない?」
「だってぇ、私はアキラと1分も1秒も
長くいたいの!!」
「ちょ、待って、ミカ。
キャラチェンしてない?」
「何言ってるの。
私はいつもこんな感じでしょう。」
(高校生なんかに
負けてたまるもんですか。)
ミカは、杏菜に負けているんじゃないかと
考えて、エステとネイルに抜かりなく
行っていた。
それで、予約時間に遅刻して
やってきていた。
「そ、そうだっけ。
まぁ、いいや。
今日、どうするの?
はい、これ。今日のメニュー。」
「アキラの好きなもの頼んでいいよ。」
「え、ああ。そう?
んじゃ、お腹すいたから色々
頼んでおくね。」
「うん。」
いつもより優しいトーンのアキラに
ミカは何だか嬉しいそうだった。
杏菜よりも、もっと見てもらうために
一緒にいる時間と投資する金額増やさないとと必死なミカだった。
そう思っていることをつゆ知らずの
アキラは、メニューを見て、
ホールスタッフに指差しで注文していた。
「まぁ、楽しんでいってね。
ちょっとだけ席外すね。」
「えー、すぐ戻ってきてね。」
アキラは、他の顧客の席にも
移動して、女子が満足するような対応を
心がけた。ヒカルがいない今、
No.1の座を超えることが
できるんじゃないと目論んでいた。
脳裏には杏菜のことよりも
ヒカルを超える気持ちの方が
上回っていた。
クラッカーが鳴り響き、
シャンパンタワーで盛り上がりを
見せていた。
杏菜は、ヒカルに大人な世界の
高級なホテルに誘われ、
ふかふかで大きなベッドに興奮していた。
「うわぁ、すごい。
大きいベッド。見た事ない。
これ、1人用なの?
お姫様になった気分。
何これ、お風呂もめっちゃ広い!
あ、ボタン押すとカラフルに
ライト光ってる。」
杏菜は部屋中をあっちに行ったり、
こっちに行ったりと
興奮が冷めなかった。
「杏菜ちゃん、ほら、こっちにおいで。」
ヒカルは、最上階の部屋から見える夜景を
見せた。
キラキラと光るビルのライトや、
車のライトで輝いていた。
少し離れたところに東京タワーと
スカイツリーも見える。
高いところから見る東京は、
こんなにも綺麗だったのかと
うっとりしていた。
「わぁ。」
窓に両手をつけて眺める。
ヒカルはドヤ顔をして、
ふふんと笑った。
「さて、これからどうする?
ルームサービス呼ぶか、お風呂か
それとも…?」
「え?ゲームでもするの?
カードゲーム?」
「…って、そんなわけないでしょう。
こんなお高いホテルに泊まって
ゲームする?」
「それもありかなって。」
「持ってきてないよ、カードなんて。」
「そっか。言ってみただけ。」
ジリジリとヒカルは、杏菜のそばに
近づいて、顎をくいっと持ち上げた。
「悪いようにはさせないよ?」
「……えへへへ。」
恥ずかして、笑いが止まらなかった。
全然そんなムードな雰囲気ができない。
「…俺、そんなにおかしい?」
「嬉しいだけ…。」
「そう?」
ヒカルは、杏菜に顔を近づけた。
唇ギリギリに寄せた瞬間に
手をヒカルの顔の前にバシッと置いた。
「ヒカルさん、高校生に手だしたら
犯罪って知ってますか?」
「……クソ真面目だな。
それは同意の上なら問題ないだろ。」
「同意?
私、OKしたわけじゃないです。
照れたけど。」
「嘘だ。明らかに
嬉しそうな顔してただろ。」
「…でも、何かいやだ。」
「なんで?」
「歯に何かついていたから。」
「そ、それだけで?」
「だって、ヒカルさんNo.1でしょう。
それくらい綺麗にしますよね?」
「……確かに。」
ヒカルはみょうに納得する。
杏菜の腕を掴んで、お風呂場へ誘導する。
「んじゃ、一緒にお風呂入ろう。」
「…初対面で?
即風呂?」
「え、綺麗にするんでしょう?」
「……そうは言いましたけど。」
「入ろう。」
強引に連れていくヒカル。
杏菜は急に怖くなった。
「……でも。」
「いいから。
せっかく高いお金払って、
ここ使うんだから、堪能しようよ。」
「……超、引く。」
「???」
「もうちょっと
いい言葉使えないんですか?
それでもNo. 1ホストですか?」
「…は?」
「帰る。」
機嫌を損ねた杏菜は、ソファに置いていた
バックを片手に出口に向かう。
ヒカルは慌てて、ドアに手をついて
行く手を阻む。
ドアを背中に
強引に顎クイをして、
同意を得ずにキスをした。
目を見開いて驚いた。
バックでバシッとヒカルをたたいた。
「やめてください!!」
「……どーせ、やってるんだろ?
アキラと何回も。」
「……やってません!
私たちそんな関係じゃないので。」
「……本当なのか、その話は。」
「処女ではありませんけど!!
好きな人とするんで、私は。
今のヒカルさんは好きじゃありません!!
ごめんなさい。」
勢いよくドアを開けて、走って逃げた。
エレベーターのボタンを何回も押して、
早く来てと願う。
意気消沈したヒカルはドアの前で崩れた。
「あいつ、本当にやってないのか。
なんで、あんなに客が。
ち、ちくしょう!!!」
ドアをガンと勢いよく叩いた。
ヒカルは滴り落ちる血を舐めた。
杏菜は、無意識にスマホを取り出して、
電話をかけた。
早く出てほしいと願った。
電話のコールが何度も鳴り響く。
女子の扱い方には、慣れていた。
惚れるであろうポイントを掴んでいる。
ヒカルの魅惑に吸い寄せられるように
ぺったりと体を密着させて、
言われるままに着いていく。
杏菜は、自分でどうすることもできない
衝動に駆られていた。
一方、その頃の湊人は、
スーツのポケットに手をつっこんでは
イキっていて、道端に落ちている小石を
蹴飛ばした。
(ちくしょー。せっかく助けに来たのに
なんだってあんな態度取られなくちゃ
いけねぇんだよ。)
いつも、杏菜の前では冷静な態度だった
湊人でさえも、ヒカルを目の前にすると
嫉妬心がむき出しになるようで、
イライラが加速する。
杏菜が自然に
吸い寄せられていくのを見て、
大人げなく、悔しくなった。
杏菜は彼女ではない。
同居人でもない。
もちろん、妻でもない。
保護者のような感覚で金銭的な
お世話している女子の1人。
でもそれは、自分の性欲を
満たすものでもない。
何か欲求を満たすために
杏菜と関わっているわけじゃない。
ただ、単に、涙を流す杏菜を
見つけて、出会った瞬間から
何かを受け取り、救い、
見守ってきた。
でも、ヒカルに着いていく杏菜を見て、
自責の念に駆られた。
自分のやっていることは杏菜にとっては
迷惑なことかもしれないと。
ため息をついて、
ビルの隙間から見える星空を見上げた。
あんなに星が輝いているのに
己の星は、すさんでいる。
湊人にとっての杏菜は
何だというのか。
自分の行動に疑問さえ感じるようになる。
湊人は、来た道を振り返って、
すぐに繁華街にある
元いたシャンデリアラウンジの店に
戻った。
◻︎◻︎◻︎
「あ、アキラさん、アキラさん!」
ユウジがドアを開けてすぐに
駆け寄ってきた。
「おう、ごめんな。
ミカ来てた?」
「そうそう、今日、たまたまミカさん
予約時間より遅れてきたから、
大丈夫です。
今からなら怒らないかもしれない。
早くテーブルの方へ行ってください。」
「お、おう。」
ユウジに背中を押されながら、
ミカの待つテーブル席に笑顔で
対応した。
「ご来店ありがとうございます。
ごめんな、ミカ。
待たせたな。」
「ちょっとぉ、アキラ、遅い。
待ちくたびれたよぉ。」
ミカはアキラへの対応スイッチが
入ったようでヘルプのリョウには
目もくれず、クネクネと体を動かした。
「待ったってどれくらい?」
「えっとぉ、10分。」
「そんなに待ってなくない?」
「だってぇ、私はアキラと1分も1秒も
長くいたいの!!」
「ちょ、待って、ミカ。
キャラチェンしてない?」
「何言ってるの。
私はいつもこんな感じでしょう。」
(高校生なんかに
負けてたまるもんですか。)
ミカは、杏菜に負けているんじゃないかと
考えて、エステとネイルに抜かりなく
行っていた。
それで、予約時間に遅刻して
やってきていた。
「そ、そうだっけ。
まぁ、いいや。
今日、どうするの?
はい、これ。今日のメニュー。」
「アキラの好きなもの頼んでいいよ。」
「え、ああ。そう?
んじゃ、お腹すいたから色々
頼んでおくね。」
「うん。」
いつもより優しいトーンのアキラに
ミカは何だか嬉しいそうだった。
杏菜よりも、もっと見てもらうために
一緒にいる時間と投資する金額増やさないとと必死なミカだった。
そう思っていることをつゆ知らずの
アキラは、メニューを見て、
ホールスタッフに指差しで注文していた。
「まぁ、楽しんでいってね。
ちょっとだけ席外すね。」
「えー、すぐ戻ってきてね。」
アキラは、他の顧客の席にも
移動して、女子が満足するような対応を
心がけた。ヒカルがいない今、
No.1の座を超えることが
できるんじゃないと目論んでいた。
脳裏には杏菜のことよりも
ヒカルを超える気持ちの方が
上回っていた。
クラッカーが鳴り響き、
シャンパンタワーで盛り上がりを
見せていた。
杏菜は、ヒカルに大人な世界の
高級なホテルに誘われ、
ふかふかで大きなベッドに興奮していた。
「うわぁ、すごい。
大きいベッド。見た事ない。
これ、1人用なの?
お姫様になった気分。
何これ、お風呂もめっちゃ広い!
あ、ボタン押すとカラフルに
ライト光ってる。」
杏菜は部屋中をあっちに行ったり、
こっちに行ったりと
興奮が冷めなかった。
「杏菜ちゃん、ほら、こっちにおいで。」
ヒカルは、最上階の部屋から見える夜景を
見せた。
キラキラと光るビルのライトや、
車のライトで輝いていた。
少し離れたところに東京タワーと
スカイツリーも見える。
高いところから見る東京は、
こんなにも綺麗だったのかと
うっとりしていた。
「わぁ。」
窓に両手をつけて眺める。
ヒカルはドヤ顔をして、
ふふんと笑った。
「さて、これからどうする?
ルームサービス呼ぶか、お風呂か
それとも…?」
「え?ゲームでもするの?
カードゲーム?」
「…って、そんなわけないでしょう。
こんなお高いホテルに泊まって
ゲームする?」
「それもありかなって。」
「持ってきてないよ、カードなんて。」
「そっか。言ってみただけ。」
ジリジリとヒカルは、杏菜のそばに
近づいて、顎をくいっと持ち上げた。
「悪いようにはさせないよ?」
「……えへへへ。」
恥ずかして、笑いが止まらなかった。
全然そんなムードな雰囲気ができない。
「…俺、そんなにおかしい?」
「嬉しいだけ…。」
「そう?」
ヒカルは、杏菜に顔を近づけた。
唇ギリギリに寄せた瞬間に
手をヒカルの顔の前にバシッと置いた。
「ヒカルさん、高校生に手だしたら
犯罪って知ってますか?」
「……クソ真面目だな。
それは同意の上なら問題ないだろ。」
「同意?
私、OKしたわけじゃないです。
照れたけど。」
「嘘だ。明らかに
嬉しそうな顔してただろ。」
「…でも、何かいやだ。」
「なんで?」
「歯に何かついていたから。」
「そ、それだけで?」
「だって、ヒカルさんNo.1でしょう。
それくらい綺麗にしますよね?」
「……確かに。」
ヒカルはみょうに納得する。
杏菜の腕を掴んで、お風呂場へ誘導する。
「んじゃ、一緒にお風呂入ろう。」
「…初対面で?
即風呂?」
「え、綺麗にするんでしょう?」
「……そうは言いましたけど。」
「入ろう。」
強引に連れていくヒカル。
杏菜は急に怖くなった。
「……でも。」
「いいから。
せっかく高いお金払って、
ここ使うんだから、堪能しようよ。」
「……超、引く。」
「???」
「もうちょっと
いい言葉使えないんですか?
それでもNo. 1ホストですか?」
「…は?」
「帰る。」
機嫌を損ねた杏菜は、ソファに置いていた
バックを片手に出口に向かう。
ヒカルは慌てて、ドアに手をついて
行く手を阻む。
ドアを背中に
強引に顎クイをして、
同意を得ずにキスをした。
目を見開いて驚いた。
バックでバシッとヒカルをたたいた。
「やめてください!!」
「……どーせ、やってるんだろ?
アキラと何回も。」
「……やってません!
私たちそんな関係じゃないので。」
「……本当なのか、その話は。」
「処女ではありませんけど!!
好きな人とするんで、私は。
今のヒカルさんは好きじゃありません!!
ごめんなさい。」
勢いよくドアを開けて、走って逃げた。
エレベーターのボタンを何回も押して、
早く来てと願う。
意気消沈したヒカルはドアの前で崩れた。
「あいつ、本当にやってないのか。
なんで、あんなに客が。
ち、ちくしょう!!!」
ドアをガンと勢いよく叩いた。
ヒカルは滴り落ちる血を舐めた。
杏菜は、無意識にスマホを取り出して、
電話をかけた。
早く出てほしいと願った。
電話のコールが何度も鳴り響く。