そう思っていたら、護衛対象がやらかした。




「なにか落ちた…!」




 コートのポケットからスマホを取り出した拍子に、きらりと光るなにかが地面に落ちる。

 護衛対象が角をまがったあと、男はそろそろとそれに近寄って、カギをひろい上げた。

 まぁ、家も近いし、このあたりが潮時か…。




「それ、リアナのだってわかってる?」


「うわっ!だ、だれ…っ」




 男に近づいて、カギをうばい取る。

 顔に合わせてしゃべれと言われ続けて覚えた、やさしい口調で、俺は男に疑問を投げた。




「こんなものひろってなにする気?そんなに夢中になる理由がわからないんだよね、オヤジもきみも。たかがアイドルでしょ?何千といる」


「か、返せよっ!それにリアナちゃんを“たかが”なんて言うな!彼女は千年に一度の美少女だぞ!」