(肝心のアドルフ様とも全然お会いできないし……。近衛騎士ってこんなにもお忙しいものなのかしら?)
オーバン公爵家は子供がリーゼロッテと妹のシャーロットのふたりしかおらず、嫡男がいない。そのため、オーバン公爵家に婿入りしてもらうべく、五年ほど前にラット伯爵家の次男で当時は騎士学校に通っていたアドルフと婚約した。
今現在アドルフは騎士として働いており、つい数か月前にイラリア付きの近衛騎士になったばかりだ。
(せめてお父様が同伴してくださったら心強かったのだけれど……)
しかし、父がいないからといって王女であるイラリアの呼び出しを無視するわけにもいかない。
リーゼロッテは小さく首を振ると、すっくと立ちあがった。
リーゼロッテの住む国──イスタールの王宮は別名〝金色の城〟と呼ばれる荘厳な建物だ。
左右に大きく広がる四階建ての城の城壁に黄色がかったタイルがふんだんに使用されており、遠目に見ると城全体が金色に見えるのでそう呼ばれるようになったのだとか。
王宮の入り口で馬車を降りて宮殿へと向かう。ふと、頭上から大きな鳥の羽ばたきのような音が聞こえてきた。
「あら、ヒッポグリフがいるわ」
リーゼロッテは空を見上げる。
オーバン公爵家は子供がリーゼロッテと妹のシャーロットのふたりしかおらず、嫡男がいない。そのため、オーバン公爵家に婿入りしてもらうべく、五年ほど前にラット伯爵家の次男で当時は騎士学校に通っていたアドルフと婚約した。
今現在アドルフは騎士として働いており、つい数か月前にイラリア付きの近衛騎士になったばかりだ。
(せめてお父様が同伴してくださったら心強かったのだけれど……)
しかし、父がいないからといって王女であるイラリアの呼び出しを無視するわけにもいかない。
リーゼロッテは小さく首を振ると、すっくと立ちあがった。
リーゼロッテの住む国──イスタールの王宮は別名〝金色の城〟と呼ばれる荘厳な建物だ。
左右に大きく広がる四階建ての城の城壁に黄色がかったタイルがふんだんに使用されており、遠目に見ると城全体が金色に見えるのでそう呼ばれるようになったのだとか。
王宮の入り口で馬車を降りて宮殿へと向かう。ふと、頭上から大きな鳥の羽ばたきのような音が聞こえてきた。
「あら、ヒッポグリフがいるわ」
リーゼロッテは空を見上げる。