モネカ宝飾店は、イスタールでも有数の高級宝飾店だった。本店は王都にあるが、国外に向かう行商人たちを客層にするために国境に近いラフォン辺境伯領にも支店を出しているのだ。

「どんな様子だった?」
「真剣な顔で店主と何かを話し込んでいたぜ。たぶん、気に入ったものでもあったんじゃないかな」

 カルロはそのときの様子を思い浮かべながら答える。

「なるほどな」

(やはり、宝飾品を強請るつもりなのだな)

 先ほどのセドリックの話も相まって、テオドールは確信を深める。
 口を利くどころか顔も見ていない妻に苛立ちを感じた。

「よく教えてくれた。貴重な情報だ」

 テオドールはそれだけ言うと、口元に薄っすらと笑みを浮かべた。