リーゼロッテはそのヒッポグリフに乗ると、「ドラゴンの巣を探して」と伝える。ヒッポグリフはまるで言葉を理解したかのように飛び立った。
「きゃっ!」
急に高度が上がり、恐怖を覚える。それに、今はリーゼロッテを後ろから包み込んでくれるテオドールはいない。
リーゼロッテはもう降ろしてと怖気づきそうになる自分を必死に叱咤する。
さすがにヒッポグリフは早く、ものの数分で森の上へと到着した。周囲を見回すが、一面に生い茂る緑以外は何も見えない。
「どこなの?」
諦めて屋敷に戻ってくれたならそれでいい。けれど、もしドラゴンの巣を探し出して、彼らを怒らせてしまったら──。
焦りだけが募ってゆく。
そのとき、「ガオオオオー」と地鳴りのような音が響き渡った。リーゼロッテは人生で一度も聞いたことがないような大きな音で、びりびりと空気が震えるのを肌で感じるほどだ。
「何?」
音がしたほうを振り返ったリーゼロッテは息を呑む。
「ドラゴンだわ……」
晴天だった空が、あっという間に厚い雲に覆われていった。
◇ ◇ ◇