「そうだわ。あの子達に協力してもらえば──」

 リーゼロッテは馬車から身を乗り出すと、御者に「屋敷に戻って」と叫ぶ。御者は急な行き先変更に戸惑ったようだが、急停車して方向を変えた。

 屋敷に着くや否や、リーゼロッテは馬車から飛び降りる。

「アイリス。幻獣騎士団の誰かに、イラリア殿下がドラゴンの巣を見に行ってしまったと伝えて! すぐに探してほしいと」

 リーゼロッテは、アイリスに命じる。
「はい。リーゼロッテ様はどちらに?」
「わたくしは獣舎に行くわ」

 リーゼロッテはそう言い捨てると、走って獣舎へと向かった。息を切らせてようやくたどり着いた獣舎では、二匹のヒッポグリフがのんびりと昼寝をしていた。

「ねえ、お願い。助けて!」

 リーゼロッテはヒッポグリフに訴える。
 馬車では森の手前までしか行けない。そこから歩いてイラリア達を探すのは無理だ。

「イラリア殿下を探さないといけないの。ドラゴンの巣を捜しに行ってしまって──。お願い。わたくしひとりの力では探せないわ」

 これはある意味賭けだった。
 ヒッポグリフは通常、パートナーとなった相手しか背中に乗せない。けれど、今の状況では頼れるのがこの二頭しかいなかったのだ。

(やっぱり無理かしら……)

 諦めかけたそのとき、ヒッポグリフの一頭が体を屈める。

「……っ、もしかして乗れって言っているの? ありがとう!」