言葉に詰まるリーゼロッテを見て、イラリアはそれ見たことかと笑う。

「決めたわ。いまから森に行く。そして、幻獣の幼獣を捕まえるわ」
「いけません!」

 リーゼロッテはハッとしてもう一度イラリアを止める。

「今、森に入るのは危険です」
「なぜ? 山火事はずっと東よ? ここからでは煙すら見えない」
「ドラゴンの繁殖期なんです。町の近くに営巣している上に、気が立っていて危険です」
「ドラゴン! ますます好都合だわ。ドラゴンに乗る幻獣騎士。なんて素敵なのかしら」

 イラリアは嬉々として両腕を広げる。

(正気なの?)

 リーゼロッテは信じられない思いでイラリアを見返す。

 ラフォン領では過去に何度もドラゴンによる被害が出ている。ひとたび怒らせると何百という家屋が破壊され、多くの人が命を落とすこともざらだ。
 そして、ラフォン領の幻獣騎士達はそうならないように、細心の注意を払って警戒している。

「だめです。絶対にいけません!」

 リーゼロッテは必死に止める。

「殿下。それは危険なのでは──」

 外務大臣もやんわりとイラリアを止めようとする。しかし、それが逆効果だった。