「ん…ああ、泣き止んだのか。悪い、寝てた」



黙って隣にいてくれたなんて何気いいやつじゃん、とか思ったのに、寝てただけかよ!


眠そうに目を擦りながらこちらを見た久遠に、思わずふっと吹き出す。



「人が失恋して号泣してる時にあんたは…」



だけど今は、その久遠のマイペースなところに救われたかも。


だってこんな風に笑えるんだから。



「…あ、そうだ。これやるよ」



久遠が腕にかけていたビニール袋からコンビニスイーツを出すと、私に向かって差し出してきた。



「何これ…ティラミス?」


「ティラミスは誰かを元気づけたい時にあげるといいと言われてる。何よりも、うまいしな」


「なんで今こんなの持ってんの…。あんた、最初から私が振られると思ってたんでしょー!」



久遠はけろっとした顔で「別に?」と言いながら、小さなスプーンも手渡してきた。



最初から望みのない恋だったけど、それでも私は瀬名くんに恋をしてよかった。


本人には届くことはなかったけど、この想いはずっと私が覚えている。それに、久遠も。


不器用だけど、きっと私を何かと心配してくれていたんだろう。



「…美味しい」



ほろ苦くて濃厚なティラミスは美味しくて、また涙が出てきそうだった。