パイナップルの上の部分みたいにツンツンな頭を撫でながら桐ヶ谷くんがけらけらと笑った。


彼は元気いっぱいの犬に似ている。



「これ落としたら誰?って絶対なりますって。それに俺、サラストとか似合わないし」


「そうかしら。案外似合いそうな気もするけど…」



ハッとこんな無駄話をしている場合ではないと我に返る。



「早く帰ってちょうだい。やることがたくさんあるんだから」



机の上に積まれている書類を手に取りながらパイプ椅子に腰掛ける。



「えー嫌ですよ。今会えたばかりなのにもう帰るなんて。いつも通りここにいまーす」



桐ヶ谷くんは私の隣に腰掛けると、へへっと無邪気に笑った。


その笑顔に慌てて赤くなった顔を隠すように俯き、書類に目を通すフリをする。



こうして仕事をする私の隣で桐ヶ谷くんが宿題をしたりスマホでゲームをしたりと、思い思いに過ごす放課後が日課となっていた。


最初は気が散るから帰って、と言っていたけど聞くような人でもないしもう慣れてしまったから強く言わないけど、理由はそれだけではなく、実はここにいてほしいと思うようにもなってきていた。


そう。私は桐ヶ谷くんのことがとっくに好きになっているのだ。



だけどしつこく毎日「好き」と言われていたのは夏休み前あたりだけで、それ以降は一度も告白をされていない。


自分の気持ちに気づいたのは夏休み後で自分も同じ気持ちだと今更言えないまま、二月になってしまったのだ。



「…あ、下校時刻ですね。そろそろ帰りましょっか」