風間「…それが、俺の願いでもあったから。」




帝「…え…」



風間「俺は、帝が一番苦しんでいるときに、帝を助けられなかった。」



そういった翔太の声は、震えていた。



風間「…困惑する美奈ちゃんに、帝を救ってほしいって…俺には助けられなかったからって…。そう伝えたんだよ。」



…お前…

俺のためにそんなに自分を追い込んでたのか…?

俺が苦しんで傷ついたのは、
お前のせいなんかじゃないのに…



風間「でも。どんなに辛い理由があったとしても、美奈ちゃんと沙羅を重ねていい理由にはならない。」



帝「…そう…だな…」



翔太の言う通りだ。
あいつは、あいつであって沙羅ではない。


頭では分かってる…つもりだ…




風間「…だからさ、最初に聞いたんだ。帝は美奈ちゃんをどう想っているんだ?って。」



帝「え…」



風間「今すぐ答えを聞きたかったわけじゃないんだ。ただ、ちゃんと考えてみてほしかった。
自分の気持ちを。そして、向き合ってほしかった。過去の自分と今の自分と。」




風間「もしも、帝が、美奈ちゃんを沙羅の幻影として好きならば、それは見過ごしてはおけない。
でも、きっかけがどうであれ、美奈ちゃん自身に興味があるのなら…きっとそれは素敵なことだと思うから…。」


優しい口調でそういう翔太。


あぁ…そうか。
いつだって翔太は俺のことを、
俺よりも分かってくれている。
助けられている。


翔太は、俺のことを助けられなかったと言った。
でも、それはちがう。




いつだって…



帝「…お前はいつだって、俺を助けてくれてるよ。」



ありがとう。



風間「…!」


俺の言葉に、驚いたような表情をした翔太。
そして、そのまま、見たこともないくらい嬉しそうに笑った。



風間「…それならよかった…。」



帝「考えてみるよ。ちゃんと。自分の気持ちとあいつへの気持ちを。」


風間「…うん。」



…俺に、答えが出せるのだろうか。
不安は消えないが、まずは考えてみるしかない。

そう思いながら、
綺麗に光る秋の夕暮れの空を見上げた。