帝「てめぇ…!いつ話した!」


その言葉を聞いた瞬間、
俺は気づけば、翔太の胸ぐらを掴んで怒鳴っていた。

この”怒り”が、何に対しての怒りなのかも分からないまま。


そして翔太は、俺の怒りにも動じず、



風間「…たしか…帝が先生から封筒に資料を入れる作業を頼まれた日より、ちょっと前だったかな?」


そう答えた。



帝「……」


てことは、あいつ…

俺と遊園地に行った日にはもう…
知ってたってことか…

それをひとつも表に出さず、
俺の誘いを受けた……



あいつは…




風間「…美奈ちゃんは、帝に沙羅と重ねられていることを分かったうえで、側にいてくれてるんだ。」



俺の心の中を見透かしているかのように、
翔太は言った。


誰かに重ねられているというのは、
自分自身の存在を否定されているのと同じくらい辛い。


相手の行動も、言動も、何もかもが、
自分に向けられたものではないのだという前提。


それはきっと想像以上に辛いものだ。



____俺は…




翔太が言うように、
あいつを沙羅と重ねていたんだと思う。
最初にメガネを外したあいつを見た時に、
沙羅が目の前にいるかのように錯覚したのは事実だ。




ソッ…



俺は、掴んでいた翔太の胸ぐらを、
静かに離した。