___やってきたのは屋上。



キレイな茜色の秋の夕暮。
いつもなら嬉しくなるようなキレイな空なのに、
今は悲しい赤に見えてしまうのだから、人間の目は本当にあてにならない。


相沢「…ごめん、急に呼び出したりして…」


美奈「ううん。私の方こそ、なんかごめんなさい…その、怒らせてしまったみたいで…」

相沢「え…いや。その…」


美奈「…?」


相沢「本当にミスコン、出るのか?」


やっぱり…ミスコンのこと、か…


美奈「ごめんね。わたしみたいなのが、その…でしゃばって…相沢くんもミスターのクラス代表だから、恥ずかしいよね…」

自分で言いながら、
内心かなり傷ついている。

しかし、



相沢「…え…?」


私の言葉に対する相沢くんの反応が
想像していたものと違っていた。


相沢「俺は、その、綺麗に着飾った美奈が全校生徒に見られるのが…嫌で…」


美奈「…え…、なんで…?」


相沢「なんでって…それは…美奈が可愛いっていうのは、俺だけが知ってればいいっていうか…」


相沢くんはうつむきながらそう言ったのだ。
心なしか耳が赤く見える。


その言葉を聞いたとき、
かあぁぁぁ…っと自分の顔が
熱くなるのがわかった。


…相沢くん、それってどういう___



相沢「っ…ごめん。こんなこといきなり言われても困るよな…」


美奈「いや、そんな…困らない…けど…」



その時生まれた、小さな疑問。


___相沢くんは、私のこと、どう思ってるんだろう…。


___そして私は…相沢くんのこと…


しかし、その疑問は、
相沢くんの言葉で遮られた。


相沢「だからっ…取りやめるのは無理かな…」


……

親切な相沢くんの頼みを無下にはしたくないけれど…


美奈「…ごめん。さっき彩香が話してたように、今回のミスコンはいろんな想いをかけてるんだ。」


相沢「…坂下に協力するために出場するってことか?」


美奈「もちろんそれが一番の理由。」


…だけど


美奈「だけど、それだけじゃない。」


相沢「…」


美奈「私が、変わりたいと思ったから。」


そう。これは私の問題。
…何かを掴めそうな気がしたから。

そしてそれに親友が力を貸してくれた。
だから…


美奈「だから、ごめん。相沢くんのお願いでも、聞けない…。」


…ごめんなさい…。