美奈「他に言うことあるでしょ。」


彩香「あはは…ごめん。」


美奈「私…会長の話聞いてどうしていいか分からなくなった。」


彩香「…そうだね…。」


美奈「前にさ…私、山神帝に言われたことあるんだ。」


彩香「え…?」


美奈「…人を見かけで判断してるのは、お前も同じだ、って。」


彩香「…」


美奈「そのとき、私…なにも言い返せなかったんだよね。会長の話を聞いて、根っこまで最低な人間じゃないのかも…って思った。」


彩香「…そう…」


美奈「会長に言われた。帝を助けて…って。でも…私なんかに何ができるんだろう、って。今までずーっと地味なメガネ系女子で生きてきた私に。」


何とかしてあげなきゃ…と思わないと言ったら嘘になる。


今なら、山神帝が一瞬見せた
寂しそうか表情の意味がわかるから。


だけど…


…私に…一体…


彩香「美奈、」


ギュ…


彩香が、優しく私の手を握った。


彩香「美奈は、美奈らしく、今まで通り先輩に接してあげればいいと思うよ。」


美奈「私…らしく…?」


彩香「うん。確かに、先輩は美奈と沙羅さんを重ねてるのかもしれない。でも、いくら見た目が似ているからって、美奈は美奈でしょ?そこは、間違えちゃいけないと私は思う。」



美奈「…」




彩香「先輩に合わせて、沙羅さんを演じようなんて、間違っても考えちゃだめ。今までみたいに…毒吐いて突き放して…それでも側で支えてあげればいいんじゃないかな?」



そっか…



私…勘違いしてた。





美人で人気者だった沙羅さんと重ねられている、それだけで


私もそれに見合う人間にならないといけないのかも…って思っていた。





でも、それは違う。




私は、沙羅さんじゃない。



山神帝のためにも、
私は私らしくいないといけない。





美奈「彩香…」




彩香「ん?」




美奈「ありがとう。」


雲が、すうーっと晴れていくようだ。