私たちがその場から離れるのを見届けていた三人は、しばらくの間無言だった。
「白石ちゃんに新しいお友だちかぁ」
推理小説に出て来る探偵のように蓮見は顎に手を当てた。
「新しい展開ですな~」
面白がっている蓮見とは対照的に、五十嵐は首を振った。
「なんか面白くない」
「あれ、海斗。どこ行くの?自販機に行きたいんじゃ…」
いきなり踵を返した天城に、蓮見が気づいて声を掛けた。
しかし無言のまま天城は歩みを進めている。
「キレてるねー」
去って行く背中を見ながら蓮見が苦笑した。
「ライバルが現れるとは思ってもみなかったんじゃない?」大きな欠伸をしながら五十嵐が言った。
「そうだね。これで、自分の気持ちに気づくといいけど」
そう言った蓮見の顔を、まじまじと見つめる五十嵐。
「壮真、いつから知ってたの?海斗の気持ち」
「ん~。去年の体育祭の時かな」
蓮見は腕を組みながら、首を傾げた。
「口では嫌いって言ってたけど、目はそうじゃなかったからねえ。あの態度見れば、完全に白石ちゃんに興味持っているのは分かるよね」
ふうんと小さく呟くと、五十嵐はうんと伸びをした。
「ま。感情に疎いから、自分の気持ちを認めるのに時間がかかるでしょうね」
「だな。まあ、面白いから付き合ってやろう!」
蓮見は意気込んで言うのと、五十嵐が再度欠伸をしたのが同時だった。
「うん、頑張って~」
「え、おい。どこ行くんだよ」
天城とは逆方向へ歩き出した五十嵐に、蓮見は慌てたように言った。
「寝てくる」
「今?このタイミングで?」
好き勝手に行動した友人二人にその場に取り残された蓮見は、大きくため息を吐いた。
「俺の友達、自由人ばっか…」