この声は紛れもなくあたしの""マスター""。


〖これから俺の電話にはすぐ出ろよ?んで、メッセージもすぐ返すこと~。分かったかね?""サーバント""ちゃん〗


握っているスマホを粉々に握り潰したいという衝動に駆られたけど、うっと堪えて深呼吸をする。


〖あの、このスマホはなんですか?〗
 
〖はあ?お前のに決まってんでしょ〗

〖あたし、スマホを買った覚えがないんですけど〗
 
〖俺が買ってやったの〗
 
〖頼んでないですけどね〗
 
〖お前さぁ、ほんっと可愛くねーな。もっと喜べよ。この俺様と四六時中連絡を取り合えるって幸せな環境に、めちゃくちゃ感謝して欲しいんだけどね~〗
 
〖はははー。このスマホお返ししますねー〗
 
〖馬鹿なの?サーバントがスマホ未所持とか話になんねえんだよ。お分かり?それとも今すぐスマホ買えるわけ?支払いできんの?できないよねー?〗


有無を言わせぬガン詰め状態……。

確かに今すぐ契約して支払いは無理だ。元々あたしが働いて、給料を貰ってたからスマホの契約に行く予定だったし。

それに、これから九条と連絡が取り合えないってのも、確かに不便ではあるかもしれない。

しかも、あたし達は普通の関係ではない。“マスター”と“サーバント”……主人と使用人という関係だ。これはなにも……何も言い返せないな。


〖できま……せん〗
 
〖だよねーー?〗

〖はい〗