「そう?ありがとう、煌。ゆっくり噛んで食べなよ」

「舞、いつもより張り切って作ったね」

「律、余計なことは言わないの」

「おい、舞ちゃん。これピーマン入ってんじゃん。ピーマン入れるなっていつも言ってんだろ!?」

「ピーマンが食べれないなんて、随分とお子ちゃまなのね?慶。文句があるなら食べなくていいよー」

「ほ~んと舞が作る料理は美味しいわね~。私より腕がいいんじゃない?」

「いや、お母さんの作る料理には敵わないよ」


あたしの隣で何も言わない九条をチラッと見てみると、とても姿勢良く、箸の持ち方も綺麗で、黙々と食べていた。育ちの良さが露骨に出てるわ。

それから九条は“美味しい”とも“不味い”とも言わず、食事は終わった。


「柊弥君、そろそろ帰らないとお家の方が心配するんじゃない?」

「そうですね。では、そろそろお暇します」

「舞、柊弥君をお見送りしてあげなさい」

「……ああ、うん」

「お父様によろしくお伝えください。では、また。おやすみなさい」


ご丁寧にあたしの家族に頭を下げて、軽く手を振りながら微笑んで玄関の外に出た九条。それを追うようにあたしも外へ出た。


「賑やかな連中なこって~」

「はっきり“うるさい連中”って言ったらどう?」

「別にうるせぇとか思ってねえし」


てっきり“うるせぇ”とか思ってるんだろうなって……そう思ってたんだけど、そうでもなかったらしい。