「ちょっ……!!」


あたしが止める間も無く、九条がクレジットカードで支払いを済ませてしまった。そして固まるあたし。


「お~い、チンタラすんな。さっさと来い」


少し先でダルそうにあたしを見ている九条の元へ小走りで向かった。


「これ」

「あ?」

「だから、これ!!」


あたしは九条に4000円を差し出したんだけど、それをチラッと見てスタスタ歩いていってしまう九条。


「あの、受け取って欲しいんだけど」

「いらん」


それってあたしが貧乏だから?

可哀想だから奢ってやるよ、そんくらい……ってやつ?見下してる?バカにしてる?哀れんでる?そんな同情……いらないんだけど。


「惨め扱いしないで」

「はあ?」


“なに言ってんの?”みたいな顔をしてあたしを見ている九条。


「あんたに奢られる筋合いはないって言ってるの」

「勘違いすんなよ。俺は自分の飯代を払ったまでだ」

「飯代って……4000円もする料理なんて出せないんですけど」

「その価値があるかないかを決めるのは俺な?」


それって遠回しに“お前の作る料理にはその価値がある”……そう言ってるのと変わらなくない?

・・・・なんだろう……少しだけ、ほんの少しだけ嬉しかったりする。


「そんなこと言われたら、適当に作るわけにはいかないね」

「フッ。んなこたぁ当たり前でしょ」