「ねえ……なんであたしの時は素で来たわけ?お得意の猫かぶりすれば良かったじゃん。あたしも初見であれなら騙されてたかもよー」


チラッと九条を見ると、プイッと顔を逸らされた。


「…………別に~」


特に深い意味も無さそうだったから、それ以上ツッコむのはやめた。面倒くさいし。無駄に絡みたくもないしね。


──── 某スーパーにて。


「アレルギーとかある?」

「いや?特にねえけど」

「嫌いな食べ物とかは?」

「う~ん、特にないかなぁ」

「了解」


はぁぁーー。なんでこんなことになっちゃったかなぁ。何が嬉しくて九条とスーパーで買い物してるんだろう。忙しなくスマホをいじってたのに、急に何を思ったのか、あたしからカートを奪って押し始めた。


「""マスター""にそんなことをさせるわけにはいきませんので、カート返してくれますー?」

「その""マスター""って嫌みったらしく言うのやめてくんね~?」


ただでさえ目立つ男がカートなんて押してるもんだから、かなーり注目の的になっている。


「ねぇ、見て見て!!めっちゃイケメン!!」

「イケメンがカート押してるとか萌える~」


ザワザワし始めた店内。

・・・・もしやこいつ……コレが狙い!?周りにちやほやされたいだけのパフォーマンス!?あーーないわ。本っっ当にないわー。あたしは無になりながら九条の隣を歩いた。