「あの、もういいですかね。あたし行きたい所があるんで」

「乗せてってやるよ。何処に行きたいわけ?」

「結構です。もうここで降ろしください」

「んだよ。つれないね~」


そう言いながら、あたしの肩に腕を回そうとしていた九条の手をベシッと払い除けた。マジで馴れ馴れしいのヤメろ。


「触らないで」


あたしがそう言うと、少し驚いたような顔をしている九条。

ま、おそらく女にこんな扱いをされたことがないんだろうね。むしろ、“いくらでも触ってください!”的な女の方が多かったんだろうなって思う。

だから、女に拒否られることに免疫がないパターン。とはいえ、可哀想だのなんだのなんて微塵も思わないから、あたしは容赦なく拒否るよ?全力で!

正直、あんたに触れられるのは“不快”のみの感情でしかないよ、あたしは。そんじょそこらの女と一緒にしないでくれる?このあたしを!!


「くくっ。なんだよ、俺のこと意識してんの?」


・・・・いやいや、どんだけポジティブなんだよ。

羨ましいわ、そのポジティブさが。で、ニヤニヤしながらあたしの顔を覗き込んでくる九条を冷めた顔で見つめるあたし。


「残念ながら""鬱陶しいな""としか思えませんけど」

「ハハッ。んなこと言っちゃって~、照れんなよ~」


何故か満足げな九条に深いため息しか出てこない。


「この御方が降ろしてくれそうにないんで、ホームセンターへ行ってもらってもいいですか?」


あたしは運転手さんに直接話しかけた。