「あんたさ、どこにデリカシー捨てて来たわけ?直ちに拾いに行った方がよろしいかと。あたし、あんたみたいなデリカシーの欠片もないような気持ち悪い男、本当に無理。マジで嫌い」


真っ直ぐ前を見据えて、死んだ目をしながら淡々とそう言い放ったあたし。

・・・・あ、やべ。

イライラしてたとはいえ、さすがに言い過ぎたかな……?うん、さすがに言い過ぎている気がしてならない。

謝るのはかなり癪だけど、謝るしかない……よね……。


「……いや、あのぉ……」


チラッと隣を見ると、口元を手で押さえて目を細めながらあたしを見ている九条。


「くく。悪くねーな」

「え?」

「やっぱお前、最高のおもちゃだわ」

「は?なに言っ……」

「で、俺との交渉忘れてないよな?」


・・・・交渉? 

えっと、交渉なんてしたっけ?もう色々と情報力が多すぎて、キャパオーバーなんですけどあたし。


「んーーっと、なんだっけ?ははは……」

「俺の言うこと何でも聞くって言ったよね?」


はて、そんなことを了承したのだろうか、あたしは──。

先ほどの出来事を思い出してみた。

頭ん中がごちゃごちゃして情報が全く完結しないけど、確かに……確かにそんなようなことを約束してしまったような気がする。


「はは、よく覚えてないなぁ……ということで、全ては無効ってことでオッケー?」


ニコッと満面の笑みを浮かべて九条を見た。すると、九条もあたしを見てニコッと微笑んだ。