「止めろ」


キュッと控えめなブレーキ音がすると同時に車が止まった。窓を開けてもこっちに見向きもしないで去って行こうとする七瀬舞。


「おい」


そう声をかけると、少しだけビクッと肩を揺らして俺の方へ振り向いた。


──── 目と目が合った瞬間、息が詰まって呼吸を忘れた。


ドクンッと胸が高鳴る……これは一体なんなんだ?

写真で見るよりも、車の窓ガラス越しで見るよりと、何倍も綺麗な顔立ちをしている女。そして、実際に会ってみて疑惑が確信に変わった。

・・・・こいつ、気ぃ強そうなタイプだな。


──── で、案の定強気なタイプだったわけで、逃げられる始末。


「柊弥様、いかがなさいますか?七瀬様の御校でしたら5分程で行けるかと」

「いや、下校ん時でいいや」

「左様でございますか」

「ん。学園に向かってちょ~」

「承知いたしました」


──── やべぇな、楽しみで仕方ねえわ。


『最高のおもちゃ』『最高の暇潰し』が手に入る──。


・・・・そう思ってたはずなんだけど、実際に七瀬舞を目の当たりにして、考えが変わったっつーか、なんかすんげえモヤモヤする。 

いや、“最高のおもちゃ”には変わりねーし、“最高の暇潰し”にも変わりはねぇんだけど……なんつーかなあ。その表現の仕方的なもんが妙に引っ掛かるっつーか、まぁよく分からん。

なんせ、女をここまで欲しいと思ったことがねえしなーー。この俺がここまで欲しいと思うとかヤバくね?もはや執着しそうで自分が怖いわ、きんもっ。