「あのさぁ、何べん言えば理解できるわけ~?ノックくらいしてくんな~い?ヤってる最中だったらどーすんの?老いぼれも大概にしとけよ~」


顔を合わせることなくスマホを見ながらそう言うと、ジジイは舌打ちをして俺に書類を投げてきた。


「クソガキが生意気な口を利くな」

「ハッ。で?なにこれ」


書類を手に取って、適当にピラピラさせる。


「朗報だ」

「んあ?朗報?」

「欲しいか、欲しくないかは柊弥……お前自体だ。じゃあな」


意味不明な言葉を残して去っていったジジイ。

『欲しいか、欲しくないか』……?

ジジイの言ったこの言葉が妙に引っ掛かる。ようやくソファーから起き上がって、書類をジーーッと眺めた。

ま、見てみるかぁ。一応ね?

で、ページを捲るとそこにあったのは身元調査報告書だった。


「あ?何だこれ」


視線を少しズラすと視界に入ったのは顔写真。割と綺麗な顔立ちで、化粧っ気のない素朴な女。


「七瀬舞──」


──── “欲しい”。


何を思うわけでも、何を考えたわけでもなく、ただ無性に『こいつが欲しい』という強い衝動に駆られた。どうしても欲しい、こいつは俺のモンだ。

この感情を何かに例えるなら、そうだなぁ──。

『最高のおもちゃ』を手に入れたい……かな?

書類を隅々まで確認して大体のことが分かった。こいつは言うまでもなく“クソ貧乏”。俺には到底理解のできないレベルで貧乏っつーことは確かだな。