「ま、お前みたいなド庶民の女を相手するのも暇潰しになりそうだし、せいぜい俺を楽しませてくれよ。な?七瀬舞」

「……っ、いい加減にしてっ!!」


ドンッと胸板を押して、男から離れた。


「んだよ。何が不満なわけー?」


・・・・は?こちとら不満しかないんですけど。だいたい、あんた女に困ってないよね?なのに、なんであたしなの?他にもっと居るでしょ。それに、おちゃらけてるっていうか、ヘラヘラしてるっていうか……馬鹿にされてるみたいで、めちゃくちゃイライラする。


「他当たってください。あたしはあんたみたいな男に微塵も興味ないんで。さようなら」


背を向けて歩き出そうとした時、後ろから腕を引っ張られてバランスを崩した。


「ちょっ……なに!?」

「お前、俺から逃げられるとでも思ってんの?」


不機嫌そうな声。チラッと見上げると、ムスッとした顔をしてあたしを見下ろしていた。なに、その不機嫌そうな顔と声は。不機嫌になりたいのはこっちなんですけど。

理不尽なことに巻き込まれてる可哀想なあたしの身にもなれっつーの。

まあ、あんたが不機嫌だろうがなんだろうが、そんなの知ったこっちゃない。何でもかんでも、自分の思い通りになると思ったら大間違いよ。


「あんたの女になんて、絶っっ対になんないから!!」


そう言うと、あたしの腕を握っている男の手にギュッと力が入って、掴まれている腕が少し痛む。