「は、はあ……どうも」

「で、なに。逃げようとしてたわけー?」


ポケットに手を突っ込みながら、あたしの顔を覗き込むように少し屈んでいる。……おい、ちょっと待て。距離感バグってない?近いって、マジで!!


「……っ。逃げるでしょ、普通は」

「くくっ。逃げたって無駄だよ~?俺から逃げられるはずがないんだからさぁ。大人しく俺の女になっとけばぁ?別に損するわけでもねぇんだしー」


損もするもなにも、あんたの女にならなきゃいけない理由がないし意味もないし、訳が分からないとしか言いようがない。

ていうか、いきなり絡んできて『俺の女にしてやってもいい』とか意味不明すぎるし、怪しすぎるでしょ。初対面だよね?ありえない。どう考えてもナイわ。


「あの、本当に意味が分からないんですけど」

「だーからさぁ、俺の女になれって言ってんの~。分かんねーの?」

「はあ。いきなり『俺の女になれ』とか言うヤバい男の女になるつもりなんて一切ありませんけど。ハッキリ言って""気持ち悪い""です」


男を見上げながら睨み付けるようにそう言い放つと、一瞬だけ目を見開いて何故かニヤニヤし始めた。


「……へえ。いいね、悪くはない」

「は?……って、ちょっ!?」


ガシッと腕を掴まれてそのまま引き寄せられると、頬をムギュッと掴まれた。強制的に上を向けさせられて、無駄にイケメンな男と目がしっかり合う。そして、視線が絡み合った。