そう聞こえて振り向くと、後輩の男の子が教室のドア付近に立っていて、あたしと目が合った。関わりがある子じゃないし、あたしに何の用だろう。


「どうしたの?」

「七瀬先輩を呼んでくれって頼まれて」

「へぇ、そうなの?誰に?」

「いや、分かんないっす。他校の制服でしたよ」



──── なんだろう。ものすんっごく嫌な予感がする。



「えーーっと、あたしを呼んでって頼んできたの男だった?」

「そうっすね」

「割と整った顔してた?」

「割とって言うか……くっそイケメンでしたよ」


・・・・おそらく嫌な予感は的中しているだろう。


「あのさ、その男は今どこに?」

「正門っす」

「……ごめん。あたしは居なかったってことにしてくれない?」

「え?」

「お願いっ!!」


後輩君に縋って、あたしは必死にお願いをした。もちろん必死すぎて顔面は崩壊しているだろうけど、そんなことはもう気にしてならんない。なんて言ったって、あたしの命が懸かってるから!!


「ちょ、ちょ、わっ、分かりました!!」


あたしの必死さにかなり引き気味の後輩君は、そそくさと去っていった。

・・・・さて、呑気にしてらんないわよ?七瀬舞。一刻も早くこの学校から去らないと……そう、逃げるのよ!!あの男からっ!!


「梨花!美玖!また明日、じゃーね!!」


あたしは手をブンブン振りながら、何か言いたげだった梨花と美玖を置いて教室を後にした──。