「あの、前田先輩。すみません、もういいですか?」

「行きなさい」

「ありがとうございます」


前田先輩に頭を下げて、あたしは再び走り始めた。


「ごめんね、胡桃ちゃん」

「……っ、なんで、どうして舞ちゃんが謝るの?……っ、私のせいで、私のせいなのにっ……」

「あたしが九条のサーバントだから、必要以上に絡んで来たんだと思う。胡桃ちゃんに嫌な思いさせちゃってごめんね。紐、痛くない?もうちょい我慢してね」

「……っ、舞ちゃん……」

「ん?」

「舞ちゃんが……っ、いい人すぎて胸が痛い……っ」

「ははっ、なにそれ。でも……ありがとう。絶対に2人でゴールしようね」

「……っ、うん!!」


あの絡みで足を止めてしまったせいで、体が鉛のように重くなってしまった。時間もロスしちゃったし……あんの女共、これでゴールできなかったら一生恨んで呪ってやるからな。

とは言え、足を止めてしまったのは完全にあたしのミスでもある。別にスルーしようと思えばできたし……というか、スルーすればよかっただけの話だったのに、胡桃ちゃんのことを悪く言われて癪に障った。

そもそも九条のサーバントってだけで意味嫌われるあたしに原因があったわけで、それに胡桃ちゃんを巻き込んでしまったのが申し訳なくて、単純に責任を感じた。