睨み付けるように九条を見上げると、なんと言うか……無自覚な色気がただ漏れしている九条があたしを見下ろしていた。


「なぁ……キスしてい?」

「──── は?」

「だから、キスしていい?」

「いや、ダメに決まってんでしょ。アホですか?」


マジでこのお坊っちゃまは何を言ってるの?ビックリなんですけど。

ていうか、ちゃんと許可を得ようとするのが意外すぎて、それにもビックリ。こいつのことだから、そういうことは無理矢理にでもするもんだと思ってた。“女の意思なんて知らん、関係ねえ!!”的な。


「俺さ、今まで女にキスしてぇとか思ったこと無かったんだけど、今無性にしてえわ。なんで?」


いや、『なんで?』って聞かれても知りませんよ、そんなこと。


「九条様のキスとやらをお求めになっているお嬢様方は沢山いらっしゃると思いますよ?連絡差し上げたらどうです?では、失礼します」


・・・・逃げようとしたけど、腕を掴まれていて逃げれるはずもなく。


「俺から逃げられるともでも思ってんの?」

「……あの、いい加減にしてください""マスター""」


死んだ目で九条を睨み付けると、ため息をつきながらあたしの腕を離した。