トイレのドアを開けられ、ずぶ濡れのあたしとご対面。


「なにしてんの?お前」

「掃除ですけど」

「…………誰にやられたか分かるか?」


九条の声のトーンと表情からして、おそらく怒っている。何に対しての怒りなのかは、あたしにはよく分かんないけど。


「まあ、聞くまでもねえか。ほぼ確でさっきすれ違った奴だろうし」


酷く冷たい目をしている九条。

これは……ヤバいパターンでは?きっと犯人を取っ捕まえて、社会的に抹殺しかねない。それはさすがにやりすぎだし、犯人は多分マスターに逆らえなかったサーバントだろうし。


「あの、あたしは別に気にしてないし、全然大丈夫っ……」

「あ?それのどこが大丈夫なわけ?」

「ただ濡れただけじゃん?ははっ」

「お前、これからもそうやって我慢するわけ?」

「……っ」


言葉が喉の奥につっかえて、上手く出てこなかった。だって、九条が一瞬……ほんの一瞬だけ、悲しそな、辛そうな、傷付いたような……そんな表情をしたから。


「柊弥~。なんか怪しいの居たから捕まえてみたけど、どうする?」


この声は……蓮様。


「あらら、やっぱり大変なことになっていたようだね」


ずぶ濡れのあたしを見て、困ったような顔をして苦笑いをしている蓮様。