「見返りが欲しくてご馳走するわけではありませんのでお気になさらず」


・・・・ああ、前田先輩が聖母に見えてきた。とりあえず拝もう。


「七瀬さんって変わってますよね」

「そうですか?初めて言われました」

「そうですか」


その会話を最後に沈黙が流れ、後もう少しで溜まり場ってところでピタッと足を止めた前田先輩。


「七瀬さん」

「あ、はい」


あたしの目を真っ直ぐ見て、顔色一つ変えない前田先輩にちょっと緊張する。


「九条様はあのお部屋のことを“溜まり場”と軽く仰いますが、正確に言えば“九条家専用VIPルーム”です。九条家の方々が代々使用してきたお部屋で、九条様が認め、信頼している人物以外の出入りは固く禁じられております。この意味が分かりますか?」

「……え、えっとぉぉ……あの部屋に居たメンツ、前田先輩達は九条に…あっ、九条様に認められて信頼もされているって……ことですよね?」

「そうなりますね」


・・・・ぶっちゃけ“へぇ~”とかしか言いようがない。


「七瀬さん。あなたもその一員だということをお忘れなきよう」

「え?」

「あなたもあの部屋に通されているでしょ?」


あーー、うん。確かに?確かにそうだけど、でもそれって九条のサーバントだからじゃない?