身長は162cmしかないけれど、極力目立たないようにしたいから今日はいつもと違ってヒールの低いものを履く。



「制服のご用意ができました。」
「ありがとう。桔梗も着替えてきていいわよ。」
「いえ、お嬢様の御髪を整えてからにしようかと考えておりましたので。」
「そう、助かるわ。」



 おかしいくらい不器用なわたしは、桔梗がいないと髪の毛を整えることもできない。
 結婚したら桔梗とは別々で暮らしていくのに。
 わたしも大丈夫なのかなとは思っている。



「お嬢様の髪をこうやってとくのも後1週間ほどなんですね。」
「なに?寂しがっているの?」
「それもそうですが、このお嬢様の綺麗な黒い髪の毛を他の誰かが触ると考えると…。」
「そうね。自分で手入れもできないし、切ってしまおうかしら。」
「短いのもお似合いかとは思いますが、こんなにロングスタイルが似合うのはお嬢様くらいなのでもったいないですよ。」



 こう桔梗に言われるのもあって、この8年間毛先を整える程度しか髪の毛を切っていない。
 腰まである私の黒髪ロングストレートヘアが綺麗に保たれているのは、桔梗の努力の賜物なのだ。