京野はハサミを両手で持ち、俺に突きつける。
包丁やナイフに比べればこんなの大したことはない。
俺は、素早く京野の手を叩いた。
ハサミが床に滑り落ちると共に。
京野の鳩尾《みぞおち》を片足の膝で、思いっきり蹴る。
「ぐはっ……!!」
倒れた京野を、俺は床に押し付けた。
そして、落ちたハサミの先端を京野の鼻に向ける。
「ひっ……、や、やめてくれ」
「花梨も、アンタに同じこと言ったんじゃないか?」
「そ、それは……」
「京野、もう二度と俺たちの前に姿を現すな」
「ひっ……」
地を這うような俺の声に。
京野の顔はサァ、と青く染まる。
「わ、わかったよ……! 俺が悪かった!」
「本当か?」
「俺、この街から出ていくし、花梨も開放する!」
ガタガタと肩を震わす京野。
俺はそっと、ハサミを下に向けた。
「そんなら早く、ここから出てけ」
「は、はいぃぃぃぃ……!!」
間抜けな返事をしながら、京野は玄関から出ていく。