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泣いていた翼をなだめてから。
俺は約束通り、京野から花梨を助ける為に、
家の中へ入った。
「酷いな……」
玄関の花瓶が、下に叩き落とされていて、
粉々に割れている。
壁には、赤い血が所々、飛沫していた。
すると。
「おい、頭だせ!! 今から坊主にしてやっからよ!!」
「いやぁぁぁ! お願い、髪だけはーーーっ!!」
粗々しい足音を立てて花梨が玄関の前を横切る。
花梨を追いかける京野が、俺に気づいて止まった。
「よぉ、“今宵魔”の総長さん」
「おい、京野、くだらないことはもうやめろ」
「……は?」
「花梨に、もう手ぇだすなって言ってんだよ」
「ふ~ん、総長さんはずいぶんと女に優しいんだねぇ~」
半笑いして、俺を見る京野。
「でもざんね~ん、俺、諦めるつもり無いから」
「どうして、そこまで花梨に執着する?」
「アイツは、純情でウブだから、手なずけるのに
丁度いい女なんだよ。だから邪魔すんな、ボケ」