琉叶を見上げると、大粒の涙が頬を伝う。
「義理のお母さんに悩んでいたときだって……、
花梨は親身に相談に乗ってくれた……っ!」
「……」
「高校だってシカトされてるわたしを、
唯一助けてくれたのは、花梨だけだったっ……!」
「……」
「だから、だからっ……!」
「……はぁ、わかった」
ポンッと、琉叶がわたしの頭に手を置く。
「……もう泣くな」
「……え?」
急に優しくなった声に、わたしは思わず胸が高鳴る。
「花梨ってヤツを助けてやる。その代わりーー」
わたしは黙って言葉の続きを待った。
「俺の、“お姫様”になれ。江藤 翼」
「……へ? ど、どういうこと?」
「返事は? 早くしないと友達が死ぬぞ」
……うっ。
痛いところをつかれたわたしはーー。
「わ、わかったよ」
と、口が自然に答えていた。
すると、琉叶の瞳が妖しく笑う。
「じゃ、俺が行くから翼はここで待ってろよ」
琉叶はそう言い残し、再び家の中へ戻ったのであった。