ひょいっとわたしのスマホを取り上げた。
「ちょっ……、何するの!?」
「翼、こっち来い」
琉叶は、わたしの手を引っ張って。
リビングルームを後にした。
わたしが連れてこられたのは家の外。
「バカッ! スマホ返して!」
琉叶が、はぁ、と地面へため息を吐く。
「バカなのはお前だ」
わたしの額を指で軽く、小突いた。
「翼、」
「なに」
「ここが“黒猫の街”だってこと、忘れてるのか?」
「忘れてないよ! でも……、警察ならーー」
言いかけて、わたしはハッとした。
『この“黒猫の街”では女はエサ。男はなんでもやって
いいってルール、なんだよ~』
バイトの帰り道、女の人に絡んでいた男の
ひとりが言っていた言葉。
わたしは今さら思い出した。
そうだ。
ここは“黒猫の街”。
問題をおこそうが、警察はそ知らぬふり。
訴えても、彼らは聞く耳を持たない。