わたしは、どんな風に返事したらいいのか
分からなかった。
「早く、乗れ。これ以上、俺を待たせるな」
「……」
わたしは、渋々とバイクの後ろに跨る。
「しっかり、俺につかまってろよ」
命令されて、桔梗原の背中に抱きつくように腕を
回すわたし。
「えっと……、右に曲がってから真っすぐ住宅地を
進んだ先が、わたしの友達の家」
「そうか、じゃ行くぞ」
またバイクを爆走するのかと思いきや。
夜の冷たい風が心地よく感じる程度の運転をしてくれてる。
そして。
ギリギリ、日付が変わる前に友達の家に着いた。
白い屋根のどこにでもあるような普通の一軒家。
「ここでいのか」
「うん。“京野”って表札だから間違いないと思う」
「ふーん、翼の友達の名前か」
わたしはフルフルと首を横に振る。
「ちょっと事情があって……、男の家に住まわせて
もらってるの。わたしの友達」