ギュッと鞄を両手で無意識に抱きしめる。

そしてぼんやりと。

この状況をつくった原因と。

自分の行動をゆっくりと思いだした。

遡ること数分前。

「俺たち結構カネ持ってるからさ~」

「や、やめてください」

「お姉ちゃんの行きたいトコ今から連れてって

あげるよ~、それでいいっしょ」

男たちに絡まれ怯えてるのは。

20代くらいのスーツを着て、ヒールをはいた女の人。

恐らく会社員だろう。

「け、警察を呼びますよ!」

女の人は必死に抵抗するも。

「おう。呼べるもんなら呼んでみたら~?」

「この“黒猫の街”では女はエサ。男はなんでもやって

いいってルール、なんだよ~」

ーープチッ!

「きゃあっ!!」

女の人の白いシャツを、男のひとりが引きちぎって。

一粒のボタンはあっけなく地面に転げ落ちる。

はだけた胸元が見えないように。

慌てて両手でその部分を隠す女の人。